研究事例紹介
AIに地名について調べさせて、観光コース名を考えてもらおう!
この研究では、複数の観光地からなる観光コースを入力すると、そのコースの魅力を短い言葉で表した「観光コースコンセプト名」を生成する手法を提案しています。 単に観光地の名前を生成AIに与えるのではなく、それぞれの観光地の特徴、複数の観光地を結びつける共通テーマ、観光地どうしの距離を自動的に調べ、生成AIに追加情報として与えます。 これにより、そのコースを巡る意味や、そこで得られる体験が伝わるコンセプト名を生成できるようにしました。
旅行を計画する際には、「どの観光地に行くか」だけでなく、「なぜ、それらの観光地を巡るのか」も重要です。
たとえば、「ミッション・ドロレス」、「パレス・オブ・ファイン・アーツ」、「ゴールデン・ゲート・ブリッジ」という3つの観光地が並んでいたとしても、それだけでは、どのような旅行になるのか分かりません。一方で、「ヒッチコックの映画を巡る、サンフランシスコのサスペンスな日帰り旅行」と説明されれば、3つの観光地を巡る意味や、そこで得られる体験を想像しやすくなります。
特に、あまり知られていない観光地を含むコースでは、観光地の名前を並べるだけでは、その魅力が十分に伝わりません。 最近では、オーバーツーリズムの問題や旅行費用の高騰で、限られたマイナースポットを巡る旅行プランにせざるを得ない場合も増えています。 旅行者にそのコースの魅力をわかってもらうためには、観光地の一覧や移動経路だけでなく、コース全体のテーマや魅力を、分かりやすい言葉で示す必要があります。
近年では、生成AIに観光地の名前を入力すれば、それらしい観光コース名を作ることはできます。 しかし、生成AIがすべての観光地について詳しく知っているとは限りません。また、それぞれの観光地について知っていたとしても、複数の観光地に共通する意外なテーマや、実際の位置関係などは、観光地名だけから正しく判断できないことがあります。
そこで、この研究では、観光コースに含まれる複数の観光地を入力すると、コースの魅力を表すコンセプトを自動的に生成するシステムを開発しました。
このシステムでは、コンセプトを生成する前に、次の3種類の情報を自動的に集めます。
- 地物特徴:それぞれの観光地がどのような場所なのか
- 集合特徴:複数の観光地を結びつける共通テーマ
- 地理的特徴:観光地間の距離、周辺施設、交通機関、駐車場など
物特徴については、それぞれの観光地をWeb検索し、検索結果から、その場所を特徴づける言葉を取り出します。たとえば、北野異人館からは「洋館建築」、「貿易商」、「異国情緒」、神戸ポートタワーからは「神戸港」、「六甲山」、「展望施設」といった言葉が得られます。
集合特徴については、観光地名と、その検索結果から得られた言葉を結びつけたグラフを作ります。そして、複数の観光地から共通してたどり着きやすく、「観光」や「神戸」のように一般的すぎない言葉を探します。これにより、「海援隊」、「文明開化」、「異国情緒」といった、複数の観光地を一つのコースとして結びつけるテーマを発見します。
さらに、地理的特徴として、観光地間の距離や、各観光地の周辺環境も調べます。 具体的には、OpenStreetMapを使って、各観光地から100メートル、200メートル、300メートル以内にある、お店や、駅やバス停、駐車場などの交通条件も含めます。
最後に、これら3種類の情報を観光地名と一緒に生成AIへ入力し、複数の観光コースコンセプトを生成します。その中から、観光コースのコンセプトとして自然で魅力的なものを、別のAIを使って選び出します。
実験では、実際の旅行情報サイトから収集した200件の観光コースを使って、コース名を生成しました。 そして、生成されたコース名について、実際に観光サイトで使われているコース名との近さを自動的に評価するとともに、被験者に魅力的で正しいコンセプト名になっているかを評価してもらいました。
実験結果から、観光地の名前だけを入力した場合には、具体的で魅力的なコース名を生成することが難しいと分かりました。 観光地の特徴、共通テーマ、移動のしやすさや周辺環境についても、ほとんど適切に表現できませんでした。
一方、3種類すべての特徴を与えた提案手法は、各特徴を一部除いた方法よりも、全体的に高い評価を得ました。
地物特徴を除くと、それぞれの観光地に固有の情報を正確に表現できなくなりました。 集合特徴を除くと、複数の観光地を結びつけるテーマが生成されにくくなりました。 また、地理的特徴を除くと、移動手段、滞在期間、周辺でできる体験に関する表現の正確性が低下しました。 特に、地理的特徴を与えることで、「日帰り」、「食べ歩き」、「公共交通で巡る」といった表現を、実際の距離や周辺環境に合わせて生成しやすくなることが分かりました。
複数の観光地から、個別の観光地の特徴、観光地間に共通するテーマ、地理的な近さを抽出して生成AIに入力。それらの情報を反映した観光コースコンセプトを生成
文献情報
- タイトル:
- Tourism Course Concept Generation via Dynamic Prompt Extension
- 著者:
- Shun Yamaguchi, Yoshiyuki Shoji, Katsumi Tanaka
- 書誌情報:
- Proc. of the 13th International Conference on Behavioural and Social Computing (BESC 2026), to appear, 2026