莊司研究室では、情報アクセス技術を中心に、本当にいろんなトピックで研究を行っています。

このページでは、主要な研究トピックの概要と、実際の研究事例を紹介します。

研究テーマ

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より現実世界での検索に近い情報検索

現状のWeb情報検索は、不自然です。

現実世界で何か商品を探す際のことをイメージしてください。 たとえば、新しいテレビを買うために、電気屋さんに行って、店員さんに自分の検索条件に見合ったテレビを探してもらう場合を考えます。 この際には、多くの場合、「時代劇に適したテレビはどれ?」、「FPSのゲームに最適なテレビはどれ?」というように、自分の置かれた状況や、自分の目的を伝えることで検索を行っています。 図書館で本を探す場合も、同様です。 「○○という登場人物が、××する本を探してください」という検索は、一般的には行われません。 検索とは、知らないことを調べるための行為であるため、調べたい対象を伝えることが出来ないからです。

一方で、現在の多くのWeb検索エンジンでは、このような不自然な検索を、利用者に強いています。 一般的な検索エンジンでは、「自分が最終的に見つけたいページに含まれていそうなキーワード」を、検索の入力としています。 本来、知らないことを調べるための情報検索なのに、調べたいページに含まれていそうな単語を、自分で推測しないといけません。

このような不自然な検索から利用者を解放するために、莊司研究室では、検索エンジンにより自由な入力を可能にするような検索アルゴリズムの研究をいくつも行っています。

研究事例:

  • 「目的」を入力とする場所やアイテムの検索
  • 「みんなの感想」を入力とするWebページ検索
などなど・・・

記憶に残る情報アクセス技術

Webで日常的に見た情報、なんにも身についてない!

現代人は、1日に4時間近くをWebの閲覧に充てているという調査報告があります。 これは、テレビや雑誌、書籍などよりも長く、現代人が一番長時間接しているメディアはWebであるということができます。

一方で、Webで得た情報は、記憶に残りづらいという指摘もされています。 個人がWeb検索で入力するクエリのうち、4割は再訪問のためのクエリだと言われています。 これには行きつけのサイトへの再訪問だけでなく、閲覧したけれど忘れてしまった情報への「調べなおし」のための再アクセスが多く含まれています。

データに照らし合わせなくても、直感的に、普段のWebアクセスは長時間接している割に、何も身についていないと感じられます。 たとえば、楽器を毎日4時間弾いていたら、1年も経ったらそれなりの腕前になります。 映画を毎日2本見ていたら映画通ですし、毎日4時間筋トレしたら筋骨隆々になれるでしょう。 ・・・それに比べて、Web閲覧は、どうでしょうか? 何か、身についているでしょうか?

莊司研究室では、こうした日常的なWeb閲覧に費やした時間を、少しでも有意義なものにするため、 Webで見た情報を記憶に残し知識に定着させるための情報アクセス技術についても研究しています。

研究事例:

  • その日のWeb閲覧履歴をカードにして整理したり、クイズにする記憶支援
  • 日常生活の中でWeb検索履歴と関連する施設に近づくと通知が出るシステム
などなど・・・

多人数の意見を集約した情報検索技術

レビューしか判断材料がないけど、レビューを全部読むのは、不可能!

近年ではインターネット上のレビュー情報から意思決定をする機会が増えています。 たとえば観たい映画を探す場合、公式サイトにはあまり情報が載っていないので、視聴者のレビューを参考に、その映画を見るかどうかを判断します。 また商品情報サイトでは、スペックシートを読んだところで、その実際の使い心地などは分からないので、 結局レビューを参考にアイテムの購入を判断することが多いです。

このように日常的に意思決定に使われるレビューですが、現状では、たくさんあるレビューを検索したり、要約したり、使いやすくする技術は未発達です。 たとえば、「どんでん返しのすごい映画」を探したい場合、どうやってレビューから映画を探せばいいでしょうか・・・? 多くの場合、レビュー中で「どんでん返し」という単語は使われず、「終盤に驚きの展開があった」、「思わず観終わった後に2週目に突入した」など、さまざまな書かれ方をします。 また、100人が「終盤、やや驚いた」と評価している映画と、5人が「終盤の展開に、人生で一番驚いた」と評している映画だったら、どちらがより「どんでん返し」度合いの高い映画でしょうか。

莊司研究室では、レビューや、投稿レシピ、ソーシャルメディアの投稿などの、「そのまま単体だと役に立たないけれど、集めると意味をもちはじめる」情報を集約して、活用できるようにする研究を進めています。

研究事例:

  • 投稿レビューを集計しての「○○な映画」のランキング
  • SNSからの「○○を買った人は、そのあと××をしがち」という事例の抽出
などなど・・・

現実世界での情報アクセス技術(ミュージアム情報アクセス)

なんとなく博物館に行くだけでは、あんまり知識が得られない。

情報アクセスは、なにも、コンピュータやWebの中に限られた話ではありません。 現実世界は情報に溢れており、人々は当たり前のように、日夜、情報を獲得しています。 学校や図書館から、街の掲示板まで、ありとあらゆる場所で情報アクセスが行われています。

莊司研究室では、特に情報アクセス技術による支援が重要な領域として、ミュージアムにおける情報アクセス支援の研究を行っています。 具体的には、博物館で展示物を観賞した際に、それがより深く知識に定着し、観賞体験が有意義になるよう、情報系の技術を使ってサポートします。

美術館や博物館といったミュージアムには、さまざまな人たちが訪れます。 その中には、学校の行事で連れて来られた人や、タダ券をもらったから来たという人など、自発的な理由で訪問していない人が多く含まれます。 そういった人たちでも、積極的にミュージアムを鑑賞できるようにして、展示物に興味を持ち、覚えて貰うためのシステムについて研究しています。

研究事例:

  • ガイド端末の操作ログを分析して、観賞体験を1枚のポストカードに変換
  • 個人の興味のあるまだ見ぬ展示物を探させる「宝探しゲーム」の自動生成
などなど・・・

その他の研究

それ以外でも、たくさんの情報アクセスに関連する(たまに、関連しない)研究を行ってきています。

研究事例:
  • 音ゲーの操作ログ分析によるトレーニング譜面の自動生成
  • VR空間内でのWeb情報検索
などなど・・・

実際の研究事例紹介

手元の画像と似たスタイルに画像を変換できる画像生成AIを探したい

MMM2025「Image-Generation AI Model Retrieval by Contrastive Learning-based Style Distance Calculation」

レビュー文を、キャッチフレーズ文体に変換しよう!

2025年 電子情報通信学会論文誌 情報マネジメント特集 「生成的言語モデルによるレビュー文のキャッチフレーズ文体への変換」

「ある商品の購入目的を達成できる、ぜんぜん別の商品」を探そう

2024年 データベース学会論文誌 「商品レビューグラフを用いた利用目的を達成可能な代替商品の検索」

分かりづらい製品スペック情報を、体験的なエピソードに変換しよう!

BigComp2024「Generating Experiential Descriptions and Estimating Evidence Using Generative Language Model and User Products Reviews」

「みんなが○○と評している映画」を、キーワードで検索できるようにしよう

BigComp2024「BERT-Based Movie Keyword Search Leveraging User-Generated Movie Rankings and Reviews」

日常的なWeb閲覧の記録を、カードにまとめて集めよう

iiWAS2023「Digital Index Card Creation and Management for Memorizing What You See on the Web」

博物館鑑賞を「個人の興味に合わせた宝探しゲーム」にしてしまおう!

ICADL 2023 「Personalized Treasure Hunt Game for Proactive Museum Appreciation by Analyzing Guide App Operation Log」

レビュー中の記述が、何について書かれているかを整理しよう

iiWAS2023「Generating Fine-Grained Aspect Names from Movie Review Sentences Using Generative Language Model」

「ギターを弾ける場所」はどこ?目的を達成できる地物の検索

Rinton Press 論文誌 JDI「Geographic Entity Retrieval for Finding Places Suitable for Certain Purposes by Using Relevance Graphs on Places and Reviews」

任意のキーワードに対して、レビュー中に現れる多様な言い換え表現を発見しよう

Rinton Press 論文誌 JDI 「Doc2Vec-based Approach for Extracting Diverse Evaluation Expressions from Online Review Data」